2024年01月11日更新
ローン残債がある住宅の売却時にフリーローンを利用する方法
住宅ローン残債がある不動産を売却したい場合、どのような方法を用いれば売却を行うことができるのでしょうか?代表的な4つの売却方法について、詳細な手順とメリット、デメリットなどについてご紹介していきます。
目次
不動産の売却には住宅ローン完済が必須?
なぜ住宅ローン残債のある不動産は売れないのか?
住宅ローン残債のある不動産を売却することはできないとよく言われますが、実際には住宅ローン残債があっても不動産の売却そのものは可能です。
しかし、住宅ローン契約を結ぶと、所有する不動産には抵当権が設定され、この抵当権が付いている物件は債務者が返済不能に陥った場合などに債権者が競売にかけることができます。
そのため、住宅ローン残債があり、抵当権が設定されている不動産を購入すると、売主の返済状況次第で購入した物件が競売にかけられてしまうのです。
もちろん、購入者が支払い不能になっている残債を肩代わりして競売にかけられるのを防ぐこともできますが、住めなくなってしまったり、余分な出費が発生したりするリスクを考えると安心して購入できません。
そのため、住宅ローン残債のある不動産は売れにくかったり、リスクヘッジとして相場より安価に売却されたりします。
これが、住宅ローン残債のある不動産は売れないと言われる理由です。
住宅ローンが完済していない不動産を売却するには?
住宅ローン残債がある不動産を売却するためには、抵当権の問題を解決しなければなりません。
抵当権を抹消するためには、住宅ローン残債を完済する必要がありますので、不動産を売却した利益で残債を返済する方法がよく用いられます。
しかし、物件の売却益で住宅ローン残債を完済できなかった場合にはどうすれば良いのでしょうか?
このような場合については、「物件売却+自己資金で返済する」、「物件売却+新規ローンを組んで返済する」、「任意売却を行う」「競売にかける」などの方法を用いて残債を解消するのが一般的です。
そもそもフリーローンとは
フリーローンとは、資金が必要となった際に金融機関等で借り入れることができるローン商品です。
住宅ローンや自動車ローン、学資ローンなどとは違い、融資金の利用目的に制限がありません。
ただし、目的が制限されているローン商品と違い、自由に利用できる分限度額が低めに抑えられていたり、金利が他のローン商品に比べて高めに設定されていたりするので注意が必要です。
特に限度額の低さは、住宅ローン残債を返済する目的の場合、残債額に届かないことも考えられますので、フリーローンを利用する場合にはいくらまで借りることができるか十分に確認しておきましょう。
住宅ローンの残債があり買い替えをする際は売却が先?購入が先?
住宅ローン残債がある家の買い替えを行う場合、既存住宅の売却と新規住宅の購入はどちらを先に行う必要があるのでしょうか?
基本的に、家を先に売ってから新しく購入する方法と、新しい家を購入してから古い家を売却する方法のどちらも利用することができます。
そのため、どちらの方法を選ぶかについては、住宅ローンの残債額や家の売却価格、自己資金などによって決めると良いでしょう。
売却先行の買い替え
売却先行の買い替えとは、既存住宅の売却手続きを済ませてから新しい家を探して購入する方法です。
先に家を売却するため、家の売却価格を元に購入予算を考えることができ、入金タイミングを考える必要もないため、新しい家を購入する際に混乱が生じにくいというメリットがあります。
また、売却できるまで新しい家を購入しないため、じっくり時間をかけて良い条件で売却できるまで待てるというのもメリットです。
しかし、家を先に売却すると、売却物件の引渡しのタイミングによっては、退去後新居を購入して住み始めるまでの間は仮住まいを用意しなければならないため、ある程度自己資金が必要となるデメリットがあります。
退去タイミングと入居タイミングを合わせられれば仮住まいを用意する必要はなくなりますが、売却と購入時期に余裕が持てるというメリットが薄れてしまうでしょう。
住宅ローン残債については、売却益で完済できるなら通常の住宅購入と手続きは変わりません。
しかし、売却益で返済しきれないという場合には、買い替えローンの利用や自己資金による返済などを行う必要があるため、手続きや金銭的な負担がやや増します。
購入先行の買い替え
先に家を購入してから既存の住宅を売却する場合は、買い替えローンなどを用いて家を購入することができるため、元の家を引き渡す時期を考えずに新しい家を探すことができます。
そのため、落ち着いて条件の良い新居を探したい、建てたいという方はこちらの方法を選んだ方がメリットは大きいでしょう。
しかし、先に物件を購入した場合、家の売却を後回しにすることになるため、家の売却価格が予定を下回り、住宅ローンを完済するために自己資金が必要になってしまう可能性があります。
また、家が売れるまでは代金を手に入れることができないため、住宅ローンが完済できる場合でも、販売代金が支払われるまでの期間、2軒分の住宅ローンを返済しなければならないのもデメリットです。
スケジュール的には購入を先行させた方がメリットは大きいのですが、資金的にはデメリットとなる部分も大きいため、自己資金や住宅ローン残債などを考慮した上で選ぶと良いでしょう。
残債がある住宅の売却でフリーローンを利用するメリット・デメリット
住宅ローン残債がある住宅を売却する際には、フリーローンなどを用いて返済を済ませておくことが重要ですが、フリーローンで資金を調達した場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
フリーローンを利用するメリット
フリーローンを利用するメリットは、自己資金に不安がある状態でも住宅ローン残債を完済することができること、返済期間を延ばして月額の返済額を抑えられることなどです。
通常、物件を売却する場合には自己資金等で返済を済ませ、抵当権を抹消しておかなければ売却が難しくなったり、相場より安価な価格でしか売れなかったりします。
そのため、自己資金でローン残債が返済しきれなかった場合、抵当権の抹消ができず、売却益が大幅に目減りしてしまうでしょう。
フリーローンを利用すれば、自己資金が不足していても住宅ローン残債を完済することができるため、相場に近い価格でスムーズに物件を売却することができます。
また、物件を売却した利益でフリーローンを返済してしまえば、金利等の負担も最小限に抑えることができるでしょう。
月額の返済額を減らせるというメリットについては、住宅ローンの契約時に月々の返済額と返済期限が決められていることが理由です。
例えば、月々10万円の返済で満30年という住宅ローンを組んでいた場合、景気の変動などで収入が減ってしまったとしても、毎月必ず10万円の返済を行わなければなりません。
このような場合に、ローン残債をフリーローンで一括返済してしまえば、住宅ローンの返済に比べて、月々の返済額を減らすことができます。
ただし、月々の返済額を減らした分、完済までの期間は延びてしまいますので、収入が回復したり、退職金などの収入があったりした時点で可能な限り前倒し返済した方が、トータルでの返済額を減らせるでしょう。
フリーローンを利用するデメリット
フリーローンは、一般的に住宅ローンに比べて金利が高いため、住宅ローン残債の額によっては借入額が大きくなり、返済総額が増えてしまうというデメリットがあります。
フリーローン商品によっては借入金額が多ければ多いほど金利が引き下げられるものもありますが、最大限まで借り入れた場合でも、住宅ローンの金利と比べると割高です。
また、住宅ローンの返済期間次第では、フリーローンの返済期間が住宅ローンより短くなってしまうという点にも注意しておきましょう。
これは、商品によっても変わりますが、フリーローンの中には完済期間が最大10年に設定されているものが多いことが理由です。
このようなフリーローンに借り換えてしまうと、住宅ローンの支払いを継続する場合に比べ、月額の返済額が多くなってしまいます。
住宅ローンの残債がある自宅の売却方法
まずは住宅ローンの残債がある状態で、自宅を売却する方法について見ていきましょう。
自宅売却をするにあたり、住宅ローンが障害となる理由と、残債があっても売却できる方法についてご説明します。
住宅ローンを完済し抵当権を外す
住宅を売却するには、抵当権を外す必要があります。
抵当権とは、住宅ローンを組む際に登記された権利のことで、ローン返済ができなくなった場合に、担保となった住宅を債務者である金融機関が売却することでその資金を返済に充てられる権利を意味します。
住宅ローンを支払っている間は、住宅の所有権はローン融資をする金融機関にあります。
そしてローンを完済することで抵当権が外れ、住宅が初めて本当の意味で購入者の所有物になるのです。
住宅ローンの残債がある状態で住宅を売りに出し、ローンの返済が滞った場合には抵当権が発動することになり、買い主が差し押さえされるといった理不尽なことが起こります。
そのため、抵当権が残ったままの住宅を購入する人はほぼいません。
つまり、よほど特別な事情がない限り、住宅を売却する際には抵当権を外すこと、つまり住宅ローンを完済することが必須となるのです。
アンダーローンの場合は一般売却ができる
では住宅ローンを完済して売却する具体的な方法を解説していきます。
まず、住宅ローンの残債を売却した金額内で完済できることがあります。
「売却金額 > 住宅ローン残債」の状態で、これをアンダーローンと呼んでいます。
住宅ローンの残債が少ない場合、あるいは一定の金額で住宅を売却できる場合にはアンダーローンになりやすく、ローン完済から売却までスムーズに進みます。
住み替えの場合は住み替えローンを組むことで売却できる
一方、住宅ローン残債を売却代金だけでは賄えない場合についてです。
このケースでは、何かしらの方法で資金を調達する必要があります。
新しい住宅に住み替えを行う場合には、住み替え(買い替え)ローンを利用できる可能性が高いでしょう。
住み替え(買い替え)ローンは、今残っている住宅ローンを、次の新しい住宅のローンとして合算して融資を受けられる制度です。
このローンを利用すれば、ローン残債を完済できなくても新しい住宅を購入することが可能になります。
今の住宅を売却したいが、どうしても資金の調達が難しいという場合には大変役立つでしょう。
もちろん、新しい住宅の購入代金が今までのローンに加算されることになるので、トータルで見ると返済額は増えることになります。
また、売却と購入を並行して進めなけらばならず、やりとりの時間と手間が増える点にも注意が必要です。
そもそも、ローンの増額に耐えうる年収や資産かどうかも含めて、審査に通過した場合のみ利用することができる制度です。
万が一返済が滞ってしまった場合のことや将来の資金計画を十分に検討した上で、利用することをおすすめします。
住み替えで新居を購入する際の買い替え特例について
住宅売却とともに新居を購入し、住み替える場合には他にも利用できる特例があります。
売却価格より新居の購入額の方が高額であった場合、売却分については譲渡所得税が発生します。
この課税を繰り延べられる制度が、「特定居住用財産の買い替え特例」です。
この特例が適用されると、売却金額と同額あるいはそれ以上の住宅を購入した場合には、売却時ではなく買い替えた住宅を改めて将来に売却する際まで課税が繰り越されることになります。
例えば5,000万円で購入した住宅を7,000万円で売却する際、差額2,000万円分が本来であれば譲渡所得税の課税対象です。
しかし、新しい住宅の購入金額が8,000万円であった場合、譲渡所得課税分が繰り延べられます。
よって、所得税、住民税、復興特別所得税がその時点では課税されません。
売却金額よりも低い価格で住宅を購入した場合にも、この特例が使用可能です。
両者の差額を収入金額とみなし、そこから所得費用と譲渡費用を差し引いた金額が、譲渡所得税の課税対象となります。
この特例の適用条件として、売却した住宅が10年以上住んでいた自分の住宅であったこと、所有期間が10年以上で、住まなくなって3年以内の申請であること、などがあります。
また、買い替えた住宅についても、土地面積や建物の床面積の制限、譲渡資産の制限、住宅ローン控除を利用していない、などの条件があります。
条件の詳細は随時変更される可能性もありますので、正式な情報を確認して利用しましょう。
自宅を売却するために住宅ローンを完済する方法
自宅売却と住宅ローンの関係性について見てきたところで、実際に住宅ローンを完済する方法を考えていきましょう。住宅の抵当権を外して売却するためには、ローン完済が再優先事項となります。
具体的な方法として次の3つをご紹介します。
自宅を売却したお金で住宅ローンを完済する
住宅を売却した代金で住宅ローンを完済する方法が最も無難な方法です。
残債が数百万円など少額であれば完済できる可能性は大いにあります。
家族が減ってからの住み替えなどで、小さな間取りの家になれば金額は低くなり、売却金額でローン残債をカバーできる可能性が高いでしょう。
ただ、購入時から住宅の価値は確実に減少していきます。
そのため、購入した金額よりも低い値段で売らなければならないことは、念頭においておきましょう。
自己資金で住宅ローンを完済する
自己資金がある場合は、それを使ってローンを完済するのもひとつの方法です。貯金など自己資金がある場合は、住宅ローンの残債に当てましょう。
確実かつきれいに完済できる一番の方法ですので、自己資金に余裕があれば検討してみましょう。
株や保険を売却したお金で住宅ローンを完済する
もう1つの方法は、株や保険を売却し、そのお金をローンの返済に当てる方法です。
株を所有している場合は売ることによって資金を確保し、ローン返済に充てることができます。
ただし、市場のタイミングや値段の見極めが非常に重要です。
また、ローン残債や新しい住宅の住宅ローンと株価を比較して、株価だけではローン残債に充てきれない場合などもあるでしょう。
そのまま所有しておいて高値になった時に換金する方が、より利益を得られるケースもあるので、一概には言えません。
多くの住宅ローンでは、返済期間中の火災保険付帯が必須条件となっており、すでに契約している人も少なくないでしょう。
長期契約の保険では、売却時の解約時点で払いすぎていた分が戻ってくることになります。
住宅の買い替えでは、新しい住宅で改めて保険に加入する必要が出てくるため、解約せざるを得なくなり、お金が戻るのです。
途中解約することで、長期契約時に適用された割引率がそのまま適用されることもあります。
例えば、30年契約で3割引になる金額を一括払いしていた場合、5年後に解約すると5年分の保険料にも3割引が適用になります。
そしてその差額が払い戻しされるという流れです。
この払い戻し分をローン返済に充てることもできますので、金額を算出してみましょう。
ただ、地震保険の場合は最長5年と期間が短く、火災保険ほどのメリットは得られないでしょう。
売却方法【1】売却代金+自己資金で完済して売却する
住宅ローン残債のある不動産を売却する際に多く用いられているのがこちらの売却代金と自己資金で住宅ローンを完済する方法です。
この方法では、不動産を売却して得られる利益を全て返済に回し、不足している部分を自己資金で補填します。
そのため、不足している部分を新規ローン契約で賄う方法に比べ、利息を余分に支払わずにすみますし、手続きも基本的に繰上げ返済と同じであるため、スムーズに物件売却と返済を行うことができるでしょう。
ただし、不動産を売却する際にはさまざまな経費や手数料がかかってしまいますので、実際の返済に必要な費用は住宅ローン残債より多くなる点には注意が必要です。
実際にどのような経費や手数料がかかるのかを見てみましょう。
印紙税
印紙税とは、「課税文書」に該当する契約書を作成した際に支払わなければならない税金のことです。
郵便局や税務署等で購入できる収入印紙を用いて支払う方法と、税務署で印紙税を納付し、書面に税印を押してもらう方法とがあります。
住宅ローン返済に関係する印紙税については、不動産売買契約書に用いられ、税額は500万円以上1,000万円以下が1万円、1,000万円以上5,000万円以下の場合は2万円です。
抵当権抹消登記費用
住宅ローンを完済すると抵当権が抹消され、抵当権抹消登記の手続きが必要になります。
抵当権の抹消登記については、住宅ローンを完済すると銀行などの金融機関が行ってくれると思われがちですが、実際には自分で手続きを行わなければなりません。
手続きは法務局で行い、抵当権抹消登記申請書や住宅ローンの完済証明書などが必要です。
費用については、法務局で申請する場合は1通1,000円、インターネットを利用して法務局のホームページから申請する場合は1通465円です。
手続きを司法書士に依頼する場合については、司法書士にもよりますが、約1万円からが手数料の目安とされています。
譲渡所得税
不動産を売り渡して利益を得た場合、この利益について税金が課せられます。
ただし、譲渡所得税には特別控除が設定されており、譲渡所得のうち3,000万円までは特別控除され、税金の対象にはなりません。
また、10年以上所有している不動産を売却した場合、特別控除と並行して軽減税率も適用されます。
こちらの軽減税率は、譲渡所得が6,000万円以下なら10%、6,000万円以上なら15%です。
手続きについては通常の確定申告の際に行いますので、不動産を売却した際には給与所得者の方も忘れずに確定申告を行うようにしましょう。
繰り上げ返済手数料
住宅ローンの繰り上げ返済を行う場合、銀行に繰り上げ返済手数料を支払わなければなりません。
手数料の額は金融機関によって違いますが、一部返済なら無料、全額の場合は約3万円の場合が多いようです。
ただし、金融機関によっては全額返済でも無料の場合や、そもそも全額返済ができない場合もありますので、契約している金融機関に確認するか契約証書を確認しておきましょう。
売却方法【2】売却代金+新規ローンを組んで完済して売却する
住宅ローン残債の返済に自己資金を使わない場合は、不足分を新規ローンで賄うというかたちを用います。
ローン商品にはさまざまなものがありますので、このような場合に用いられるローンについて見てみましょう。
住み替えローン
住宅を売却して新しい家を購入する場合に用いられるのが住み替えローンです。
一般的な住宅ローン融資額に加えて今あるローン残債をまとめることができる商品で、月々の返済額を今までとほとんど変えることなく、新しい家に住み替えることができます。
住み替えローンという名称の通り、住み替え、買い替え目的での利用に用いられるローン商品ですので、不動産を売却するだけの場合には利用することができません。
無担保ローン
フリーローンなどとも呼ばれているのがこちらの無担保ローンです。
住宅ローンや自動車ローンのように購入した商品を担保にする必要がなく、比較的簡単に融資を受けることができます。
ただし、担保が必要ない分、金利が他のローンに比べて割高だったり、限度額が低かったりする点には注意が必要です。
無担保ローンは、売却にともなう引っ越し費用などの経費や、手数料を用意できない場合などの少額の融資が必要な場合に利用すると良いでしょう。
つなぎローン
つなぎローンとは、住み替えローンで用いられている融資で、融資が実際に行われるまでの間に必要な費用等を融資するローン商品です。
住宅ローン残債の返済にも利用することができるため、住み替えを予定しているという方は住み替えローンと同時につなぎローンも申し込んでおくと良いでしょう。
売却方法【3】任意売却を行う
任意売却とは
「任意売却」とは、住宅ローンや借入金の返済が困難になった際に、抵当権が設定されている不動産を売却して返済にあてる手続きのことです。
同じような手続きとして「競売」がありますが、任意売却では債務者と債権者で話し合いを行い、抵当権を解除してから通常の不動産市場で物件を売却し、その利益で債務を返済します。
任意売却はあくまで住宅ローンの返済が不能になった際に行う手続きであるため、物件を処分したいといった目的の場合は、上でご紹介している新規ローンで残債を返済する方法や、自己資金を用いる方法が一般的です。
住宅を任意売却する
住宅ローンの返済が滞ってしまった場合、任意売却という方法で自宅を売却できます。
任意売却は債権者となっている保証会社、金融機関に交渉し、承諾をもって初めて成立する方法です。
つまり、承諾が得られないと任意売却をすることはできません。
ローン滞納になると、保証会社が融資してくれている金融会社に対して代理で弁済します。
この代理弁済をもって債権が保証会社に移動しますが、その前に抵当権を外し売却するための方法が任意売却です。
債権を得た保証会社は、物件を競売にかけて売却し、残債回収を図るのが一般的な流れとなっています。
ただ、競売では取引額が安くなりやすいため、その前に任意売却にて少しでも高額で取り引きしようというのが、任意売却の基本的な意図です。
適用条件としては、ローンの滞納やオーバーローン状態が続いている状態であることで、それ以外では難しいとされています。
任意売却と一般売却の違い
任意売却と一般売却の違いは、ローン残債の有無です。
一般的な売却では、ローンの残債を売却代金、あるいは自己資金や他での借り入れなどで補い、完済した後で抵当権を外し、売却へと進むことになります。
しかし、売却代金をもってしてもローンが残ってしまう場合に、どうしても売却するために抵当権を外す方法が任意売却ということになります。
保証会社や金融機関の承諾がないと任意売却ができないのは、ローン残債の支払いを受け入れてくれるかどうかの判断次第ということです。
任意売却のメリット
任意売却では債権者との協議は必要ですが、抵当権の抹消に同意が得られれば通常の不動産取引として物件を売却することができるため、市場価格に沿った売却益が得られます。
そのため、競売に比べて返済に回せる金銭が多くなり、売却価格次第では住宅ローン残債をほぼ全額任意売却の利益で返済できる場合もあるのです。
もし、住宅ローン残債が返済しきれなかった場合でも、競売に比べて高値で売却することができるため、返済総額をある程度圧縮することができます。
その他にも、任意売却は通常の商取引と同じ手続きで不動産が売却されるため、周囲や売主の関係者に住宅ローンの返済が滞って立ち退いたという情報を知られないというのもメリットと言えるでしょう。
任意売却のデメリット
任意売却を行うためには、住宅ローン契約を結んでいる金融機関に抵当権の抹消を同意してもらわなければなりません。
通常、任意売却を行った方が競売に比べて売却益が大きくなるため、同意を得られる可能性は高いのですが、債権者が複数の場合は債権者全ての同意が得られず、任意売却が行えないという可能性もあります。
これは、売却益の分配率が低い債権者が分配率の引き上げを求め、抵当権の抹消に同意しないことが理由です。
このような状況になった場合、個人では交渉を進めていくのが難しいため、任意売却を得意としている不動産仲介業者に交渉を依頼した方が良いでしょう。
任意売却の相談先は金融機関
こうした任意売却のポイントを押さえた上で、まずは金融機関にその旨を相談してみましょう。
そこで、任意売却を得意、あるいは専門とする不動産会社を紹介してもらうのが、最も現実的で成功しやすい方法と言えます。
任意売却について調べたからといって、直接業者に話を持っていく前に、金融機関に話を聞いてみましょう。
任意売却をしなくとも、返済額の調整や元本の一時的な支払い停止など、別の対策を得られる可能性もあります。
ちなみに、専門の弁護士がいる任意売却相談センターも利用できますので検討してみるとよいでしょう。
任意売却を行う際に必要な種類
任意売却に必要な基本的な必要書類は、一般売却と変わりませんが追加で必要となるものに、次の2点があります。
- 住宅ローン借入時の債権者との金銭消費貸借契約書、保証委託契約書
- 競売申立がすでに行われている場合は、競売開始決定通知書や催促状
これらの書類については専門業者から求められることがあります。
任意売却後は無理のない範囲での返済交渉が可能になる
任意売却を行った後は、債権回収会社への返済義務が発生します。
そのため、返済義務自体は継続して発生しますが、金額をより現実的な額へ変更するための交渉が可能です。
無理して早く返済しようとすることは難しいと相手側もわかっているので、可能な金額を提示すれば応じてくれるでしょう。
任意売却を行うリスク
先ほどのデメリットでも触れましたが、任意売却を行った後一定期間は信用機関に名前が載り、いわゆるブラックリスト入りします。
そのため、新たにローンが組めなくなる、新しいクレジットカードが作れなくなるといった状態になります。
ただし、住宅ローンを滞納している時点でブラックリストになっているため、任意売却をしたからブラックリスト入りしたというわけではありません。
任意売却を行う際の注意点
任意売却を行う上で、注意したいことは必ず金融機関の承諾が必要であるという点です。
そのため、複数の借り入れ先がある場合は手続きが複雑になります。
複数の借り入れということは、抵当権が複数あるということと同じです。抵当権を外すためにはそれぞれに交渉を行う必要があり、最終的にすべての借り入れ先で任意売却への許可が必須となるのです。
時間も手間もかかることは容易に想像できるでしょう。
また、任意売却中に買い手がつかなかった場合、競売にて売却されることになるので、それまでに売却を完了させなければいけません。
金融機関と連携した任意売却専門の業者などを尋ねて、期間内に売却を成立させられるように協力を仰ぐことも有効でしょう。
総じて任意売却は特殊な不動産売却方法ですので、返済スケジュールの見直しなど他の方法で対策できないか、よく検討するとともに金融機関への相談を優先しましょう。
売却方法【4】競売にかける
「競売」とは、任意売却の場合と同じく、住宅ローンなどの返済が不可能になってしまった場合に、担保として抵当権を設定していた不動産を売却して債権者に分配する制度です。
任意売却では、債権者の同意の上で抵当権を抹消して通常の不動産市場で物件の売却を行いますが、競売では裁判所が物件を差し押え、裁判所によって売却が行われます。
売却価格は市場価格の約7割以下と低く設定されていますが、入札によって売却価格が決定されるため、相場の約8割程度の価格で売却されることが多いようです。
もし、競売によって住宅ローンが返済しきれなかった場合については、金融機関などの債権者との協議を行い、新しくローンを組むなどして返済を行っていきます。
競売は任意売却や他の売却方法と比べて売却価格が安価に設定されるため、住宅ローン残債が残ってしまうリスクが大きい売却方法です。
住宅ローンの返済が難しくなってしまった場合には、金融機関などの債権者と協議し、競売物件として差し押さえられる前に任意売却などの方法を用いた方が将来的な負担を減らすことができます。
住宅ローンの残債がある自宅を売却する前にしておくべきこと
住宅ローンが残っている状態で、自宅売却を検討する際、実際に売りに出す前にしておくべきこともあります。
詳しくみていきましょう。
不動産一括査定サービスを利用し住宅の売却相場を把握しておく
実際にいくらで住宅を売却できるのかを調べるために、市場の売却相場を把握しておく必要があります。
これは、適正な価格で住宅を売却するために大切なステップですので、必ず自分で調べておくようにしましょう。
不動産一括査定サービスを利用すれば、比較的簡単に売却価格を割り出すことができます。
インターネット上での利用が可能で、住宅の築年数や間取り、敷地面積といった条件を記入するだけです。
複数の不動産会社か査定を行ってくれるため、平均価格から相場を知ることができます。
業者1社に絞って依頼してしまうと、価格が相場から離れていても比較ができず、妥当性の判断が難しくなります。
売れそうな値段から相場価格を高い精度で割り出すためには、複数の査定を比較することが望ましいでしょう。
自宅の売却時にかかる諸費用を把握しておく
自宅を売却する際には、さまざまな経費がかかります。売却代金は得られますが、諸経費の支払いを考慮しておかないと、想定していたよりも多くの資金が必要になり慌てることになりかねません。
必要な経費を先に把握しておきましょう。
主な必要経費の内訳は、以下のとおりです。
- 印紙税:売買契約書に必要な収入印紙代
- 司法書士への報酬:住宅の所有権の移転登記を依頼する司法書士へ支払います。
基本的には抵当権抹消登記とまとめて依頼するため、売主側が負担します。 - 抵当権抹消登記費用:不動産ひとつあたりにかかります。
これに加え、先ほどの司法書士への報酬も支払います。 - 仲介手数料:不動産仲介会社へ支払う報酬です。売却金額に応じて変動し、400万円以上の売却であれば売却価格の3%+6万円の計算で算出されるのが一般的です
- 繰り上げ返済手数料:住宅ローンの繰り上げ返済を行う際、金融機関へ支払います。
金融機関ごとに価格は異なります。
なお、繰り上げ返済の手数料は必須ではなく、金融機関によっては無料の場合もありますので、事前に調べておきましょう。
住宅ローンの残債がある自宅の売却時に譲渡損失が発生した場合
住宅ローンが残っているままで自宅を売却する際、購入金額よりも売却金額が安かった場合は譲渡損失が出ることになります。
この譲渡損失の発生により利用できる特例についてご紹介します。
居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例について
住宅は経年とともに価値が下がるため、どうしても購入金額よりも売却時の金額が低くなってしまいます。
それを譲渡損失といい、次の計算式で算出できる譲渡所得がマイナスだった場合に譲渡損失が発生した、という言い方をします。
「譲渡所得=譲渡価額ー所得額ー譲渡費用」
譲渡損失発生時に受けられるのが「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」という制度です。
ローン残債がある場合に課税対象となる額の繰越控除ができる金額を増やせることになっています。
具体的には、譲渡損失額のうちローン残債から譲渡価額を控除した金額を、3年間繰越控除できるという内容です。
ローン残債の金額が大きいほど繰越控除額も増えることになります。
マンションも含めた不動産売却においては、この特例は非常にメリットのある制度と認識されています。
特例を受けるためには確定申告が必要になる
ただし、この特例を受けるためには、売却後の確定申告が必要になることを覚えておきましょう。
確定申告時に必要な書類は下記のとおりです。忘れずにそろえて提出しましょう。
- 除票住民票
- 譲渡資産の登記事項証明書
- 譲渡所得計算明細
- 住宅借入金の残高証明書
不動産売却に対応する優良な不動産会社を見つけるには?
ここまで説明してきた不動産売却は、あくまで一例となっています。
正確な売却金額を知るためには、売却前に「売却査定」を受ける必要があります。
そのとき大事なのが、複数社に査定依頼して必ず「比較検討」をするということ!
「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」
「複数社に何回も同じ説明をするのが面倒くさい...。」
そんな方は、簡単に無料で一括査定が可能なサービスがありますので、ぜひご利用ください。
一生のうちに不動産売却をする機会はそこまで多いものではありません。
後悔しない、失敗しない売却をするためにも、不動産会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール
株式会社worth style home
濵田昭平2005年より東京急行電鉄株式会社財務戦略室主計部にて都市開発における多様な事業セグメントの業務を経験。2012年1月より都心部で高級マンション賃貸仲介業を展開する株式会社ModernStandardへ転職し、賃貸仲介営業職での最短トップ記録樹立。2014年1月より「株式会社worth style home」での総合不動産業をスタート。1,000万円~10億のマンション・土地等の売買仲介業務を行う。
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