2020年08月19日更新

監修記事

成年後見人が自宅を売却できるのか?流れや注意点について

成年後見人が自宅を売却できるのかについて

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認知症や加齢などにより判断能力が十分でなくなった方に代わり、その方の権利や財産を守るために法定代理人を立てる制度があります。

これを「成年後見制度」といい、後見人は被後見人の代理として様々な契約を行う権限を持っています。

では、後見人は被後見人の自宅を売却することも可能なのでしょうか。

成年後見人は自宅を売却する権限を持っている

結論から述べると、成年後見人は成年被後見人の自宅を処分することが可能です。

ただし、全ての物件について成年後見人の判断だけで自由に売却ができるかと言うとそうではありません。

被後見人の自宅の売却を後見人が売却する場合にはいくつかの条件を満たす必要があるのです。

詳しい内容や注意点については後述します。

老人ホームなどへの入居で自宅を売却するケースは増えている

自宅での生活が困難になり、老人ホームへ入居するなどして自宅が空き家となってしまうケースがあります。

老人ホームや介護施設の入居費用を賄う目的や、空き家の管理をすることが困難であるといった理由から近年では成年被後見人の自宅を売却するケースも増えているようです。

成年後見人が自宅売却する時のおもな流れについて

成年後見人が成年被後見人の自宅を売却する際の流れは通常の不動産売買の流れとは多少異なる点があります。

必要な手続きが多い分、売却を決めてから実際に売却代金を受け取るまでに時間を要することがあるかもしれません。

事前にどのような手続きが必要であるのかについて知っておくことで、実際に取引を行う際にスムーズに進行させることができるでしょう。

ここでは成年後見人が成年被後見人の自宅を売買する場合の取引がどのような流れで行われるかについてご説明します。

「民法859条の3」により家庭裁判所の許可が必要

民法859条の3の定めにより、成年後見人が成年被後見人に代わって居住用建物や敷地の売却などの処分を行う際には家庭裁判所の許可を得なければならないとされています。

ここで言う居住用建物とは現に成年被後見人の住居として使用されている建物だけでなく、過去に居住の実績がある建物のことも含まれます。

また、過去や現在だけでなく将来その物件に居住する可能性がある場合も居住用建物として扱われます。

たとえば、成年被後見人が老人ホーム等に入居しており、現在は空き家となっている物件があるとしましょう。

将来的に施設に入居している成年被後見人が施設を退去し、所有する物件に居住する可能性がある場合なども居住用建物となります。

成年後見人が成年被後見人の不動産を処分する場合、その不動産が居住用であるかどうかが家庭裁判所への申請の要否を分ける判断基準となります。

不動産業者と契約する

まずは自宅を売却するために不動産業者へ売買の仲介を依頼します。

この時、成年後見人として仲介を依頼することを伝えておきましょう。

通常の不動産売買と成年後見人による不動産売買では手順が異なり、契約書に記載する内容も異なるためです。

また、依頼する不動産会社はできるだけ親切で丁寧に対応してくれるところを選びましょう。

不動産会社と媒介契約を締結したら不動産会社は広告を出し、不動産の買い手を探します。

買い手が見つかり、売主・買主共に納得できる条件が整ったら売買契約を締結します。

この時作成する契約書の内容は通常の売買契約とは異なり、家庭裁判所の許可を停止条件とするという特約を記載します。

これは何かというと、売買契約を締結したとしても家庭裁判所がその契約を認めなければ売買契約は無効となるというものです。

家庭裁判所へ申し立てを行う

売買契約を締結したら今度は家庭裁判所へ売却許可決定の申し立てを行います。

この申し立てには売買契約書の写しを提出する必要があるため、事前に買主との間で売買契約を締結しておく必要があります。

なぜ売買契約締結後にわざわざ家庭裁判所の許可が必要となるのでしょうか。

それは、成年後見人が成年被後見人の自宅を成年後見人自身の利益目的で勝手に処分することを防止するためであると言われています。

面倒に感じられるかもしれませんが、実際に過去にそのような事件があったため、正式な成年後見人が行った契約であっても家庭裁判所の許可が必須です。

家庭裁判所への申し立てから許可が下りるまでは通常約1カ月かかると言われているので、余裕のあるスケジュールを立てて行動しましょう。

決済する

家庭裁判所からの許可が下りたらいよいよ物件の引き渡しを行います。

多くの場合、決済は司法書士の立ち会いのもとで行われます。

買主が代金を支払い、売主から買主へ所有権移転の登記が済んだら売買完了となります。

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成年後見人が自宅売却するときの注意点について

成年後見人が成年被後見人の自宅を売却する際にはいくつか注意しなければならない点があります。

中には契約そのものが無効となってしまうような内容もあるため、どのようなことに注意すべきかについてはしっかり押さえておきましょう。

無許可の自宅売却は無効になってしまう

法定代理人である成年後見人が行った売買契約であっても家庭裁判所の許可が下りなければ自宅売却の契約は無効となってしまいます。

他の契約行為であれば成年後見人は家庭裁判所の許可を得ることなく成年被後見人に代わって様々な契約を結ぶことができます。

しかし、居住用建物を処分するということは成年被後見人にとって大きな影響を及ぼします。

仮に正当な根拠がない状態で居住用建物を失ってしまうと成年被後見人は生活の拠点を失い、その後の生活に支障をきたしてしまう恐れがあります。

そのため、家庭裁判所は成年被後見人の居住用建物を売却する際にはその理由を確認するようになっているのです。

家庭裁判所では何のための売却であるか、売却で得た資金は成年被後見人のために使用されるのか等についての確認が行われます。

不動産との契約には特約が必要

成年被後見人の自宅を売却する際には不動産会社へ売買の仲介を依頼することが多いでしょう。

この不動産会社が買主を見つけて売買契約を行う場合は必ず「家庭裁判所の許可を停止条件とする」という特約を記載します。

買主にとっては契約成立後も家庭裁判所で売買契約が認めらるまでは契約が無効となる可能性があり、約1~2カ月は不確定な状態が続きます。

そのため通常の売買契約よりも成年被後見人の居住用建物を売却する場合は買主を見つけることが困難であることが想定されます。

もし自宅の売却代金を老人ホームや介護施設への入居費用に充てたいと考えるのであれば、なるべく早めに行動した方が良いでしょう。

不慣れな売却手続きはプロに相談したほうがいい

慣れている方であれば自分自身で不動産売却の手続きを進めることもできるかもしれません。

しかし、成年被後見人の自宅を売却する場合は通常の不動産の売買契約とは異なる手続き等が存在します。

不慣れな売却手続きでは書類に不備があったり手続きに多くの時間を費やしてしまう可能性もあるでしょう。

また、家庭裁判所へ売却の許可を申請する際に説明する売却理由が認められなければ、せっかく売買契約が成立しても契約が無効になってしまいます。

その場合、自分たちが売却代金を手にすることができないだけでなく買主にも迷惑をかけてしまうことになるのです。

限られた時間の中でスムーズに成年被後見人の自宅を売却したいのであれば、売却手続きはプロに相談した方が良いでしょう。

不動産売却を依頼する際の業者の選び方について

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成年後見人が成年被後見人の代理として保有している不動産を売却するにあたって、最適な不動産会社を選ぶ時のポイントをご紹介します。

まずは自分たちの事情をしっかり聞いてくれる会社を選びましょう。

時間をかけてでも良い条件で売却したいのか、それとも多少安くても構わないのでできるだけ早く売却したいのか等、人によって売却時に求めるものは異なります。

杓子定規な対応ではなく依頼者の要望にフレキシブルに対応してくれる会社を選ぶと後の手続きも安心です。

他にはインターネット等を利用してその会社の評判をチェックするのも良いでしょう。

そこそこ実績があり、口コミの記載内容も良いような会社であれば、満足できる取引を行えることが期待できます。

また、有利な条件で不動産売却を行うためには一つの会社からの査定だけでなく、複数の会社から査定を取ることが重要です。

そしてその査定額の平均値等を参考にして対象となる不動産の価値を把握しておきましょう。インターネットで一括で査定を申し込めるサイトもあるのでそれらを利用するのも良いでしょう。

最後に、売却したい物件の価値を高めることも大切です。

価値を高めるためにできることは何も大規模なリフォームや改築だけではありません。

内覧者に魅力的に見えるよう家を掃除したり庭を整備したりといったことでも効果は期待できます。

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不動産売却に対応する優良な不動産会社を見つけるには?

ここまで説明してきた不動産売却は、あくまで一例となっています。

正確な売却金額を知るためには、売却前に「売却査定」を受ける必要があります。

そのとき大事なのが、複数社に査定依頼して必ず「比較検討」をするということ!

「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」

「複数社に何回も同じ説明をするのが面倒くさい...。」

そんな方は、簡単に無料で一括査定が可能なサービスがありますので、ぜひご利用ください。

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一生のうちに不動産売却をする機会はそこまで多いものではありません。

後悔しない、失敗しない売却をするためにも、不動産会社選びは慎重に行いましょう!

この記事の監修者プロフィール

【監修者】株式会社worth style home 濵田昭平

株式会社worth style home

濵田昭平

2005年より東京急行電鉄株式会社財務戦略室主計部にて都市開発における多様な事業セグメントの業務を経験。2012年1月より都心部で高級マンション賃貸仲介業を展開する株式会社ModernStandardへ転職し、賃貸仲介営業職での最短トップ記録樹立。2014年1月より「株式会社worth style home」での総合不動産業をスタート。1,000万円~10億のマンション・土地等の売買仲介業務を行う。

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