2023年12月08日更新
生活保護で住宅ローンを支払ってもOK?持ち家があっても受給は可能?
生活保護費は住宅ローンの残債があると受給できません。これは生活保護費で負債を返済することが趣旨に反するとの考えからです。それでは生活に困窮している場合、住宅ローンをどのように処理すれば生活保護を受けられるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
生活保護費で住宅ローンは払えるのか?
やむを得ない事情で生活保護費を受給したい場合、もし住宅ローンの返済中であれば扱いはどうなるのでしょうか。
生活保護費と住宅ローンの関係についてみていきましょう。
結論:生活保護費で住宅ローンを払えない
受給された生活保護費で住宅ローンを支払うことはできるのでしょうか。
これは結論から言えば認められません。
生活保護は健康で文化的な最低限度の生活を保障するものであるために、この目的から逸脱していると判断されるものには生活保護費の支払いが認められません。
住宅ローンの返済を認めると、生活保護費が資産(持ち家)を形成するお金に回されるために、生活保護費の趣旨から逸脱していると考えるのが一般的な判断です。
例外:住宅ローンが少ない場合
住宅ローンの返済中であっても、例外的に生活保護費の支給対象になることがあります。
それは住宅ローンの返済期間が残り少なく残債が少額である場合です。この判断基準は各自治体で異なります。
たとえば東京都では、目安として期間は5年程度、金額は月ごとの支払額が世帯の生活扶助基準の15%程度、ローン残額が総額で300万円以下としています。
しかし同時に「個別事例ごとに慎重に判断すべき」としており、この目安が絶対的基準ではないとしています。
最終的には生活状況と住宅ローンの現況を照らし合わせて総合的な判断をすることになるでしょう。
また、失業や疾病などの理由により住宅ローンの返済が困難になった場合、住宅ローンの返済の繰り延べが認められることがあります。
返済期間を延ばすことによって、毎月の返済が軽減されるのです。
場合によっては、当面の間、金利のみの返済が認められることもあります。
こうした住宅ローンの繰り延べをしているケースも、生活保護費の支給を認められることがあります。
住宅ローンの残債があって生活保護を受けるにはどうすればよい?
一部例外的措置があるものの、基本的には住宅ローンの返済中は生活保護を受けることができません。
それではまさに生活が困窮していて、生活保護を受けないことには暮らしていけない状況のときには、どのような手立てをすれば生活保護が受けられるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
住宅を売却して自己資産をゼロにする
住宅ローンを完済するためには、任意売却という方法があります。
これは債権者である金融機関の承認を得て住宅を売りに出す方法です。
売却方法は、一般的な不動産取引と何ら変わりありません。
しかしこの任意売却によって売却した額が残債を下回ると、負債が残ったままになってしまいます。
しかし、この負債についてはこれ以上の返済が不可能であるため、負債を解消するためには自己破産の処理が必要になります。
ただし、自己破産については福祉事務所の管轄業務ではないため、法テラス等を利用して弁護士に手続きを依頼することになります。
なお自己破産以外の方法として、民事法律扶助制度を活用する方法があります。
それでは売却金額が残債を上回れば生活保護が受給できるのでしょうか。実はそれも難しいのが現状です。
売却金額が残債を上回ると収入が発生するために、資産(貯金)があることになります。
そのために生活保護は受けられないのです。
生活保護受給が認められる貯金の額は最低生活費の半分以下とされていますから、貯金が一人当たり数万円を超えると生活保護は受けられません。
困窮が著しく住宅の売却を終える期間を待てない
住宅を任意売却する意思があっても、実際に売却できるまでの期間の生活費が確保できない場合は、売却をすることが明白であれば、生活保護費の支給対象になることがあります。
ただし福祉窓口は基本的に不正受給を警戒しているため、絶対に適用されるという保証があるわけではありません。
受給するためには困窮が著しく生命の危険があることを納得してもらう必要があります。
ひとりで説得が困難であれば、法テラスを利用して、弁護士か司法書士を通じて福祉窓口に説明・交渉をしてもらいましょう。
法テラスは利用料の負担はありません。申請が認められない場合も不服審査請求によって認められることがあります。
こうした手続きも法テラスを利用すれば費用は発生しません。
ただしこういったケースでは、売却が成立した時点で生活保護停止あるいは生活保護廃止になり、受給した分の生活保護費の返済を求められることになります。
しかし売却で発生した収入では生活保護費を返済できない場合、あるいは生活保護費を返済できるものの貯金がほぼなくなる場合は、やはり生活保護費受給が必要になります。
こうしたケースであれば、あらためて福祉課への生活保護開始手続きが必要になります。
この場合も、自分で説明して受け入れられなければ、法テラスを利用する方法があります。
売却額よりも売却を優先する
生活保護を受ける必要から家を売却する場合には、売却額にこだわることよりも少しでも早く売却することの方が重要です。
しかし生活保護を早く受けるために不当に安く売却したり、売却と偽って自己資産としたりしていないことを福祉課に説明して納得してもらう必要があります。
そのためには、売却を依頼した不動産会社から説明をしてもらう方法が有効です。
こうした点についても売却前に不動産会社にあらかじめ伝えておくようにしましょう。
生活保護と住宅ローンの関係とは?
生活保護は住宅ローンがあると受けられないのが原則です。
どういった根拠から住宅ローンがあると差障りがあるのか、詳しくみていきましょう。
原則:生活保護費で資産形成はできない
生活保護費は、持ち家に住んでいても受給することができます。
住宅ローンがあると生活保護費が受給できないのは、生活保護費で資産形成するのは趣旨に反するという考え方によるものです。
したがって住宅ローンがゼロになった段階で、自宅に住み続けながら生活保護を受けることは可能です。
原則:資産があると生活保護は受けられない
資産があると生活保護は受けられません。資産を売却して生活費にあてることで生活が可能になるからです。
この場合の資産とは、持ち家、車、貯金、生命保険の払戻金などが該当します。
資産にも例外がある
ただし資産にも例外があります。その資産を手放すと暮らしが成り立たない場合は、保有が認められるのです。
たとえば、山奥などの極端に交通の便が悪い場合の生活手段としての車は認められます。
また持ち家が自宅である場合も基本的に問題はありません。
また個人事業主においては、売却価値の低い事業用設備、事業用機械器具、商品なども認められています。
その他、厚生労働省「生活保護の実施要項」に資産の保有が認められるものが記載されています。
ただし同実施要項には「処分価格が利用価値に比して著しく大きいと認められたものについてはこの限りではない」とされていることから、いわゆる「豪邸」クラスの家屋の保有は認められません。
また豪邸とまではいかなくても、部屋が余っているような持ち家の場合、余った部屋を賃貸として収入を得るよう指導されることもあります。
持ち家は処分しなくてよい
福祉窓口に相談にいくと「持ち家を売却してから来なさい」と指導されることがあります。
しかしこれはまちがいだと言えるでしょう。
具体的な金額は地域の物価に応じて差がありますが、一定の資産価値以下であれば持ち家であっても住み続けることはできるのです。
住宅ローンが返済されているのであれば、持ち家に住んでいたとしてもためらわずに申請を行いましょう。
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ここまで説明してきた不動産売却は、あくまで一例となっています。
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一生のうちに不動産売却をする機会はそこまで多いものではありません。
後悔しない、失敗しない売却をするためにも、不動産会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール
株式会社worth style home
濵田昭平2005年より東京急行電鉄株式会社財務戦略室主計部にて都市開発における多様な事業セグメントの業務を経験。2012年1月より都心部で高級マンション賃貸仲介業を展開する株式会社ModernStandardへ転職し、賃貸仲介営業職での最短トップ記録樹立。2014年1月より「株式会社worth style home」での総合不動産業をスタート。1,000万円~10億のマンション・土地等の売買仲介業務を行う。
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